2008年 01月 31日
ジャカルタ公演・2日目そして千秋楽 |
本番2日目、そして今日が千秋楽。
ホテルの朝食は午前9時まで、と早いので、自然と早起きのリズムができる。金さんも毎日リズムよく起きて、朝食をとっている。
昨日の本番で使ったヘアジェルがあまりよくないので、新しいのを買いにスーパーマーケットへ出かけた。きれいな大きなスーパーで、お目当てのものが見つかった。ついでに、お土産になりそうな紅茶を買う。
ついでに忘れ物をとりに劇場へ。スタッフのみんなはすでに来ていて、のんびりゆったりしている。わざわざ椅子から立ち上がって、あいさつしに来てくれた。イワンさんはパソコンに向かって仕事中。
インドネシアの劇場スタッフは、おそらくインドネシア人全般的にそうだと思うが、舞台表現者に対して徹底した尊重の念があるように感じる。何がどうというわけではないが、アーティストが心地やすいようにするためには、努力を惜しまない、といった態度が見受けられる。かといって、全然おしつけがましくなく、いわば、「黒子」的な存在のしかたができる。これはマレーシアでもヨーロッパでも日本でもないくらいの深いリスペクトの心である。
14時最大有力紙「コンパス」のロングインタビュー。記者は受賞歴もあるマリアさんという50代の女性。金満里という人物について、深く掘り下げた記事を書きたい、とのことで、金さんは施設生活から青い芝の活動、そこから表現に至るまで、健常者との関係などについて語っていく。取材は1時間半に及び、さらにその後の雑談のような追加質問タイムを入れると、2時間に。どのような記事になって出てくるかはわからないが、インドネシアの人たちに金さんの考え方やバックグラウンドを知ってもらえる唯一の貴重な機会であったと思う。
16時半劇場入り。抜き取り稽古は2箇所。着替えとアンコールの終わり方について入念にチェック。
到着の空港から密着取材をしていたヘンリが別れの挨拶に来た。明日は仕事で遠出なので、今日中に記事を仕上げるため、今夜の公演にはこれない、という。やさしい顔立ちなのだが、実は彼は10年前の民主化闘争の先鋒を切っていた活動家なのである。その話しを聞かせてくれる予定だったが、残念ながら時間がなくなってしまった。彼は「もうずいぶん前のことになってしまった。今の状況に失望している」と言っていた。
着替え・メイク、と準備をすすめ、19時45分金さんスタンバイ完了。開演Qの確認のため、ロビーへ出ると、客席はすでに8割方埋まっているようで、ロビーにも絶えず観客が受付に来ている。国際交流基金の金井さんと塚本さんによると、1階席はだいたい埋まって、2階席もすでに満席、という。全く予想外だったので、驚いたのと基金の皆さんのご尽力には頭が下がる思いであった。
20時開演。昨日はシーンごとに拍手が出るノリの良さだったが、今日はぐっと息を凝らして集中している雰囲気。携帯の音もしない。時折、カメラのシャッター音(マスコミが今日も何社か来ている)が聞こえる。
ラストシーンのガムランが終わり、暗転になり、金さんがお辞儀して登場すると、一気に大きな拍手があふれた。昨日よりも大きな音で、昨日よりも長い。なかなかやまない。金さんが転がってはけて、その後にもう一度大きな拍手。
車椅子で金さんがロビーに現われると、そこに残っていた人がまた大きな拍手。残っている人数は昨日よりも多い。きちんと距離をとって、皆集まってきて、握手を求める人もいた。聞くと、インドネシアを代表する女優さんから、劇作家、画家、演出家とそうそうたる芸術家の面々が来場してくれていた。
大好評以上のすごい感動をしてくださっているようだ。複数の人が、まるで絵画のようだった、と言い、そのうちひとりはフランシス・ベーコンの絵画を想起させる美しさだったとの評。ガムランやパンジ・スミランについてなど質問が尽きず、非常に濃密なアーティスト・トークの時間となった。約30分間。
劇場に戻ると、ばらしはすでに始っていて、そろそろ終わりそうな雰囲気である。インドネシア人スタッフは、のんびりしているように見えて、非常に仕事が速い。
楽屋を片付けて終了。金さんはほぼ初対面となる劇場スタッフとあいさつを交わしている。写真家のラスティにとってはまたとないシャッターチャンス到来、とばかりに写真を撮りまくっている。
この劇場と別れるのはなんだかちょっと寂しい気持ちになりながら、わずか数日だがそこで上演させてもらえたことを劇場に感謝しつつ、そこを後にした。
そして打ち上げ。何から何まで国際交流基金の皆様にお世話になり恐縮してしまう。しかし、そんな遠慮がちな関係にはさせない、インドネシア人の芸術への態度にとても近いものをお持ちの、所長・金井さんの懐の深さにすっかり甘えて、5日間のジャカルタ滞在を満喫させていただいた。
明日は、このツアーの最終日。夜の飛行機でジャカルタを発ち、シンガポール経由で帰国する。
(川喜多綾子)
(写真上:自転車屋台のおにいさん)
(写真中:劇場入り口になるどら。開場開演ベルである。インドネシアの劇場にはこれが必ずあるそう)
(写真下:劇場の門のところになる看板前で記念撮影。撮影は照明の海老澤さん)
ホテルの朝食は午前9時まで、と早いので、自然と早起きのリズムができる。金さんも毎日リズムよく起きて、朝食をとっている。
昨日の本番で使ったヘアジェルがあまりよくないので、新しいのを買いにスーパーマーケットへ出かけた。きれいな大きなスーパーで、お目当てのものが見つかった。ついでに、お土産になりそうな紅茶を買う。
ついでに忘れ物をとりに劇場へ。スタッフのみんなはすでに来ていて、のんびりゆったりしている。わざわざ椅子から立ち上がって、あいさつしに来てくれた。イワンさんはパソコンに向かって仕事中。
インドネシアの劇場スタッフは、おそらくインドネシア人全般的にそうだと思うが、舞台表現者に対して徹底した尊重の念があるように感じる。何がどうというわけではないが、アーティストが心地やすいようにするためには、努力を惜しまない、といった態度が見受けられる。かといって、全然おしつけがましくなく、いわば、「黒子」的な存在のしかたができる。これはマレーシアでもヨーロッパでも日本でもないくらいの深いリスペクトの心である。
14時最大有力紙「コンパス」のロングインタビュー。記者は受賞歴もあるマリアさんという50代の女性。金満里という人物について、深く掘り下げた記事を書きたい、とのことで、金さんは施設生活から青い芝の活動、そこから表現に至るまで、健常者との関係などについて語っていく。取材は1時間半に及び、さらにその後の雑談のような追加質問タイムを入れると、2時間に。どのような記事になって出てくるかはわからないが、インドネシアの人たちに金さんの考え方やバックグラウンドを知ってもらえる唯一の貴重な機会であったと思う。
16時半劇場入り。抜き取り稽古は2箇所。着替えとアンコールの終わり方について入念にチェック。
到着の空港から密着取材をしていたヘンリが別れの挨拶に来た。明日は仕事で遠出なので、今日中に記事を仕上げるため、今夜の公演にはこれない、という。やさしい顔立ちなのだが、実は彼は10年前の民主化闘争の先鋒を切っていた活動家なのである。その話しを聞かせてくれる予定だったが、残念ながら時間がなくなってしまった。彼は「もうずいぶん前のことになってしまった。今の状況に失望している」と言っていた。
着替え・メイク、と準備をすすめ、19時45分金さんスタンバイ完了。開演Qの確認のため、ロビーへ出ると、客席はすでに8割方埋まっているようで、ロビーにも絶えず観客が受付に来ている。国際交流基金の金井さんと塚本さんによると、1階席はだいたい埋まって、2階席もすでに満席、という。全く予想外だったので、驚いたのと基金の皆さんのご尽力には頭が下がる思いであった。
20時開演。昨日はシーンごとに拍手が出るノリの良さだったが、今日はぐっと息を凝らして集中している雰囲気。携帯の音もしない。時折、カメラのシャッター音(マスコミが今日も何社か来ている)が聞こえる。
ラストシーンのガムランが終わり、暗転になり、金さんがお辞儀して登場すると、一気に大きな拍手があふれた。昨日よりも大きな音で、昨日よりも長い。なかなかやまない。金さんが転がってはけて、その後にもう一度大きな拍手。
車椅子で金さんがロビーに現われると、そこに残っていた人がまた大きな拍手。残っている人数は昨日よりも多い。きちんと距離をとって、皆集まってきて、握手を求める人もいた。聞くと、インドネシアを代表する女優さんから、劇作家、画家、演出家とそうそうたる芸術家の面々が来場してくれていた。
大好評以上のすごい感動をしてくださっているようだ。複数の人が、まるで絵画のようだった、と言い、そのうちひとりはフランシス・ベーコンの絵画を想起させる美しさだったとの評。ガムランやパンジ・スミランについてなど質問が尽きず、非常に濃密なアーティスト・トークの時間となった。約30分間。
劇場に戻ると、ばらしはすでに始っていて、そろそろ終わりそうな雰囲気である。インドネシア人スタッフは、のんびりしているように見えて、非常に仕事が速い。
楽屋を片付けて終了。金さんはほぼ初対面となる劇場スタッフとあいさつを交わしている。写真家のラスティにとってはまたとないシャッターチャンス到来、とばかりに写真を撮りまくっている。
この劇場と別れるのはなんだかちょっと寂しい気持ちになりながら、わずか数日だがそこで上演させてもらえたことを劇場に感謝しつつ、そこを後にした。
そして打ち上げ。何から何まで国際交流基金の皆様にお世話になり恐縮してしまう。しかし、そんな遠慮がちな関係にはさせない、インドネシア人の芸術への態度にとても近いものをお持ちの、所長・金井さんの懐の深さにすっかり甘えて、5日間のジャカルタ滞在を満喫させていただいた。
明日は、このツアーの最終日。夜の飛行機でジャカルタを発ち、シンガポール経由で帰国する。
(川喜多綾子)
(写真上:自転車屋台のおにいさん)
(写真中:劇場入り口になるどら。開場開演ベルである。インドネシアの劇場にはこれが必ずあるそう)
(写真下:劇場の門のところになる看板前で記念撮影。撮影は照明の海老澤さん)
by taihen_imaju
| 2008-01-31 23:09